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プロジェクトインタビュー

第5回プロジェクトインタビュー:
 京急ミュージアム 様


京急グループ本社新社屋ビルに、お客様の歓声が響く“にぎわい施設”をつくる!

「京急ミュージアム」は、『本物』を見て、触れて、楽しむ、をコンセプトに、京急創立120周年事業の一環として整備されました。当社はミュージアムの計画・設計・制作にわたり本プロジェクトをお手伝いさせて頂きました。本稿では、京急ミュージアム様の館長、ご担当者と当社のプロジェクト担当者が、プロジェクトを振り返りながら、京急ミュージアムに込めた想いやさまざまなエピソードを語っています。

株式会社京急アドエンタープライズ 営業本部 ビジネスサポート事業部 マネージャー
京急ミュージアム 館長
佐藤 武彦 様
1978年京浜急行電鉄に入社。浦賀駅駅務掛から鉄道員の道をスタートし、車掌を経て約12年の間、電車運転士を務めた経験を持つ。その後、乗務員の指導や鉄道の安全対策を担当。さらに新入社員の採用・研修を行う営業センターの所長を務め後輩の育成に携わった。2019年には、京急ミュージアム計画に先立ち、京急久里浜駅長からプロジェクトチームに異動し、同館の初代館長を務める。
京浜急行電鉄株式会社
鉄道本部 運輸営業部 営業企画課 課長補佐
飯島 学 様
1993年京浜急行電鉄に入社。上大岡駅駅務掛から車掌を経験した後、鉄道営業や駅構内店舗の設備管理担当を経験。2005年から着任した鉄道の安全対策を行う部署にて、佐藤館長とともに事故資料室開設プロジェクトも担当した。広報・総務担当時代に経験した周年史編集の経験を活かして、京急ミュージアムのプロジェクトに加わり、再び佐藤館長と二人三脚で館運営に携わっている。
株式会社トータルメディア開発研究所
本社事業部 事業推進部 推進2課 
柴田 雄二郎
2000年トータルメディア開発研究所入社
入社以来、一貫してプロジェクト推進業務に従事し、九州国立博物館や東京都江戸東京博物館リニューアルなどのビッグプロジェクトを歴任。公共文化施設から企業ミュージアムまで幅広い館種を手掛けている。JR東日本の鉄道博物館南館整備プロジェクトにも携わり、鉄道関連のミュージアム整備にも精通し、建築との設計調整や大型展示物の制作・搬入・設置調整などの知見も保有。京急ミュージアムでは豊富な知識と経験をいかし、新社屋内の交通系ミュージアム整備という難しいプロジェクトを完遂に導いた。
京急グループ本社ビルの1階に整備された「京急ミュージアム」

開館して3年。コロナでの入場制限を続ける中、毎月予約開始からおよそ2日間で予約が埋まる盛況ぶり。

京浜急行電鉄株式会社 鉄道本部 運輸営業部 営業企画課 課長補佐
飯島 学 様(以下、飯島氏)

京急グループの歴史や事業を紹介する施設として、お子さまから大人までの幅広い利活用を目指した当館は、開館して3年を迎えました。開館後すぐコロナ禍に見舞われ、入場制限をかける状況が現在も続いていますが、京急ファン、鉄道ファンの皆さまにもご満足いただけている手応えがあり、ご案内するお取引先様からの声からも当社グループに対する期待がうかがえます。

当時のプロジェクトを数々のエピソードと共に振り返る。

京急ミュージアム 館長 佐藤 武彦 様(以下、佐藤館長)
現在、1日の入館者数を約150人に限定していますが、毎月1日に1カ月分の予約受付をまとめて行うと、およそ2日間でいっぱいになる状況です。なかでも本物の新1000形電車運転台による実写映像の運転シミュレーター「鉄道シミュレーション」やオリジナルデザインのプラレール車両の工作体験ができるプログラム『マイ車両工場』などの体験コーナーは、わずか1時間以内で満員に。来館客の年齢層が低いのは予想外で、ベビーカー置き場を急きょ増やすなどの対応も取りました。館内には小さなお子さんの笑顔があふれ、我々も思わず顔がほころびます。

本社ビル移転を機に、みなとみらい21地区に人が集まる「にぎわい施設」をつくる。

(飯島氏)
本社ビルは元々、高輪ゲートウェイ駅(東京都港区)の品川再開発に影響する場所に位置していました。移転を計画することとなり、決まった行き先は、京急線エリアにおいて沿線の中心にある横浜市西区のみなとみらい21地区。これを機会に、周辺ビルに分散していたグループ会社も顔を合わせて仕事ができる集合体のビルを新築しようと計画が進みました。
建設予定地のみなとみらい21地区には、都市景観に配慮した建物の高さ制限や、建物色調の統一などいくつかの決まりがあり、そのうちの1つに街の中に人が集まる「にぎわい施設」を整備する項目もあります。

熟考を重ねるうちに見えてきたのが、本物に徹底してこだわる展示。

(飯島氏)
狭小の空間に、将来沿線での活躍を担う子どもたちや鉄道ファン、事業パートナーまでの幅広い層を満足させながら、みなとみらい21地区のエリアマネジメントに適した施設をどう実現するか。熟考を重ねるうちに見えてきたのが、本物に徹底してこだわる展示でした。
かつて当社グループは、電気鉄道事業として関東初の電車を開通させるなど、120年の歴史のなかで多様な挑戦と努力を繰り返し、新しい価値を創造して社会に貢献してきました。その歴史や価値はやはり「本物」でしか伝えられない。そこで、歴史的車両「230形デハ236号」や実際の運転台を使った運転シミュレーター、リアリティーに富んだジオラマなどを展示しています。

株式会社トータルメディア開発研究所
本社事業部 事業推進部 推進2課 柴田雄二郎(以下、柴田)

当施設の特徴の一つに、本社入り口がある2階エントランスから見下ろせる点があります。俯瞰ふかんで眺めたとき、電車やジオラマをどこに配置すると最もバランスが良いかに心を配りました。空間デザインを肌感覚で捉えてもらうため、CGによる透視図ではなくアナログの模型を多用した提案をしたのもポイントです。
当社が京急ミュージアムの計画に携わったのは2018年から。かつて私は鉄道博物館(さいたま市)のリニューアルを手がけた経験もあり、電車の知識は多少ありました。ですが改めて『本物』の肝要を問われると難しい。展示だけでなく、体験プログラムづくりから工作キットの品質に至るまで徹底してこだわり、京急の皆さんと毎週議論を重ねて内容に磨きをかけていきました。

(佐藤館長)
実は、初期の段階でトータルメディアさんからいただいた提案内容と現状のレイアウトを比べてみると、電車の向きが異なるなどの細かな違いはあれども、かなり構想時に近いものです。社屋内に整備するミュージアムとしての運営の柔軟性を考慮した配置は、これまで数多くの施設を手がけた経験があればこそとうならされました。

展示物ひとつひとつに込められた様々なこだわりや想いを語る。

建設中の社屋ビル内への鉄道車両の搬入は、まさに針の穴に糸を通すような作業。

(飯島氏)
我々は普段電車を動かしていますが、それを線路から外し、ビルのなかに入れる方法など想像もつきません。搬入ノウハウなどをトータルメディアさんから伝授いただき、実現に搬入まで漕ぎ着けましたが、それでもやはり苦労は多かった。ビルの建築現場には資材が置かれ、プレハブの事務所も建っています。また、現ミュージアムがある1階には上層階の建築のために必要な工事用のエレベーターがあり、電車を入れた瞬間に上へ資材が送れなくなります。
さらに電車を仮搬入した場所が地下鉄の躯体くたいで、クレーンを使って上層に引き上げる際には、近接する関係者との協議が必要であったりするなど、課題は山積みで。刻一刻と変わる工事現場の日程に合わせた段取りは、まさに針の穴に糸を通すようでした。ですが昨年6月の深夜、横浜市金沢区の総合車両製作所からの本社ビルへ搬入する際には、公表していないにもかかわらず約200人の鉄道ファンが集まりましたが、安全に整然と見守って下さり、搬入が完了した際には大きな拍手を送ってくださった。感慨深かったですね。

埼玉県の川口市立科学館が青木町公園内で管理していた車両を修復。 多くの鉄道ファンが見守る中、夜を徹して行われる車両搬入作業。 新社屋建設現場への車両搬入・設置作業 京急グループ本社ビル内に展示された歴史的車両「230形・デハ236号」

(飯島氏)
乗降のためのホームと線路は本物にこだわる車両と同様、引退時である1970年代の情景の再現に注力しました。当時の世代のレールを探し、実際に使われている砂利を敷き詰め、架線や送電線も当社グループの社員が設置しました。ですが当社の社内資料を当たっても、ホーム再現に必要な資料はほぼ皆無です。頭を抱えていたところ、当時のホームの写真を撮られていた団体『HYU かながわ鉄道資料保存会』の皆さまの協力があり、細部に至るまで蘇らせることができました。

『HYU かながわ鉄道資料保存会』の資料協力により再現した1970年代の情景

(柴田)
当時の柱の汚れの雰囲気を出すエイジング作業は楽しかったですね。どうせならと、ゴミ箱についても、コーヒーの缶やミカンの皮、70年代当時の世相がわかる新聞などのレプリカを散りばめ、分別のなかった当時の様子を再現しました。
車内には、京急様のこれまでの挑戦などを記した企業史が展示されています。映像は子どもたちが飽きないようわかりやすさと尺に気を配りました。ナレーションにはアニメ「ちびまる子ちゃん」のさくら友蔵役で知られる声優・島田敏さんを起用し、まるで長い歴史を持つ車両自身が語っているかのような雰囲気を目指しました。

当時の雰囲気を来館者に伝えるための様々な工夫を振り返る。 車内には、京急グループの歴史を語る貴重な資料を展示。

全長約12mにわたってリアルな沿線風景をちりばめた『京急ラインジオラマ』は人気の展示。

(飯島氏)
沿線風景をリアルに再現した長さ約12メートルの「京急ラインジオラマ」は、トータルメディアさん経由で職人を手配していただきました。我々が依頼したのは『沿線を空間内に全て再現してほしい』『子どもたちも楽しめるように』の2点。
春のシーズンには三浦海岸の桜並木がジオラマでも咲き、品川駅前の改良工事が進めば、ジオラマもビルの解体工事が並行して進みます。
沿線に住んでいるお客様は、自分たちの身近な風景をジオラマの中に見つけるとすごく喜ばれます。
また、B to B(企業間取引)で当社の事業を説明する、新入社員研修におけるグループの知識向上にも役立つなどの理由から、限られた空間に当グループの会社の建物を散りばめています。ジオラマの中央付近に、実物のビルよりもかなり目立つ大きな縮尺で建っているのが、この本社ビルです(笑)。

沿線風景をリアルに再現した長さ約12メートルの「京急ラインジオラマ」。

四方から眺められるジオラマに沿線風景をつないで表現していくのは至難の業だった。

(柴田)
博物館のジオラマなどは通常、奥の一方が風景を描いた壁面で三方から観覧できるようになっています。ですが今回の場合、レイアウトの関係から壁に寄せてしまうと、空間が詰まってしまう。そのためジオラマを壁面から離して独立させたのですが、四方からの眺めを確保しつつ京急の沿線風景をつないでいくのは至難の業でした。どの角度から見ても単調な内容にならずに楽しめるような構成にするのが難しかったです。
ジオラマを囲むパーティションの高さにも気を配りました。通常はジオラマの破損を防ぐためにパーティションを高くしたりガラス壁でふさいだりしますが、それでは見た目の迫力が半減しますし、ジオラマとの隔たりがあるとお子さんも満足できません。運営側からすれば、中に手が伸びる、撮影中のスマホが落ちるなどの恐れからやきもきするかもしれませんが、ここは譲れませんでした。

お子様にも楽しんで頂けるように、パーティションの高さも抑えるように配慮。

本物の新1000形電車運転台による実写映像を使った「運転シミュレーション」へのこだわり。

(佐藤館長)
館のテーマが『本物』なら鉄道博物館の鉄板のシミュレーターも、やはり本物の運転台にこだわりたい。そこで現在活躍する車両の構体をトータルメディアさんに支給し、展示として改造していただきました。引退した車両は全部部品がついていますが、現役のために穴だらけです。そこで車両の整備を行う工場の方々に『ここにボタンがあれば、どれだけ子どもたちが喜ぶか』と相談すると、呼応して備品を提供してくれた。もとの予定では穴の箇所はふさいでお終いでしたが、おかげでより本物感が出たと思います。

本物にこだわり、現在活躍する車両の構体を改造して制作。 車両内部や運転席にも本物としてのこだわりを追求。

(飯島氏)
映像に関しても、トータルメディアさんにご手配いただいたシミュレーター制作会社さんが、我々が設計上、依頼していない点も自ら自走して確かめてくれた。その徹底ぶりに驚きました。

(柴田)
撮影したときを、しみじみ思い出しました。雨の降るなか、京急の終電に乗り、車庫に入り、先頭部分にカメラをセッティングして、翌朝の始発で撮影を開始しました。終電から始発までは電車内で仮眠をとって待機するというのは貴重な体験でした。

車両の先頭部分にカメラをセッティングして撮影に臨んだ。

本物さながらの雰囲気で、京急グループのバス路線の運航を体験できる「バスネットワーク」。

(飯島氏)
最新型のバスの運転台はさすがに我々も手配ができなかった。部品を提供し、それに合わせてモックアップ(模型)をつくっていただきました。ですが、バス業務に関わる人間が見ても『どこからか切ってきたのか』と間違えるほど。バスのボタン押し放題や行き先変更表示のギミックは、まさに子どもの夢です。通常、バスの放送装置は、放送と運賃表と行き先が全て連動していますが、ここではそれぞれ独立し、実在しないアクションを楽しむことができます。

バス運転台を再現した『バスネットワーク』は、実物と見間違うほど。

(柴田)
降車ボタンは押したくなりますよね。小さなお子さんの背丈に合わせて設計しました。おっしゃる通り、いろいろなアイデアの源は、子どもの夢をかなえたい思いからです。

(佐藤館長)
非常にリアルに出来ている鉄道の「運転シミュレーション」が怖いというお子さまは、よくこちらのバスで遊んでいます。京急グループのバス路線のネットワークを体験できる車窓の映像は、バスの運転手の高さに合わせたカメラをワンボックスカーの頭に取り付け、トータルメディアさんと一緒に映像を撮りに行きました。撮影にバスを使わなかったのは、お客さんがバス停付近で本物と勘違いしてしまうから。『バスはそんなに急に曲がらない』『急発進しない』など細かな点にもこだわりました。

運転手さんの目線に合わせた映像で、まさにバスを運転しているような感覚を提供。

京急グループ本社ビルの屋外サインとしても機能する「ケイキューブ」

(佐藤館長)
屋外にある京急の電車をモチーフにした丸みを帯びた四角い椅子は、談笑のために腰掛けて使っていただけるのはもちろん、目の前のビルが京急グループの拠点だと伝えるサインとしての役割も担っています。はじめは「ケイキューブ」のある場所に本物の電車を展示する案もありましたが、荷重の関係などから実現が難しい。何か一目で京急のビルだとわかる方法はないかと相談したところ、トータルメディアさんから出てきた案が「ケイキューブ」でした。

さまざまな試作デザインを重ねてようやく実現にこぎつけた「ケイキューブ」。

(柴田)
この展示は、デザインをどこまで削ぎ落とすかに悩みました。あまりに簡略化すると『本物』との差が大きくなってしまう。逆に、窓の数が正しいかなど、正確さにとらわれ過ぎると、親しみやすさが半減します。検討を重ねた結果、いい塩梅あんばいに落とし込めたのではないかと思います。

(飯島氏)
一見してそれぞれ『あ、〇〇形(車両名)だ』とわかりつつも、玩具らしさもある絶妙なバランスです。実は「ケイキューブ」は先日、その機能性やデザイン性が高く評価され、横浜の魅力ある景観をつくる広告物として『第2回横浜サイン賞』に選ばれました。先ほども申し上げたように、みなとみらい21地区の景観の条例は非常に厳格です。京急電車のシンボルカラーの赤も、色味がきついとNGになる。その辺りの調整にもご苦労されたはずです。

構想から2年以上。何度も失敗を重ね、試行錯誤の末に出来上がった体験プログラム「マイ車両工場」

(佐藤館長)
お客さま自身がデザインしたイラストを、オリジナルの鉄道玩具にしてお持ち帰りいただく同プログラムは、構想から2年以上の検討を要しています。車両玩具にマジックで書き込む、水転写のシールを貼り付けるなど試行錯誤の末に、自由にお絵描きができる現在のシール方式に着地しました。社員家族に向けたトライアルのため、休日に大人ふたりで、市販のプラレールを前にして、どうシールを貼るのだろうと四苦八苦したのもいまとなってはいい思い出です。

京急の車両をお客さま自身がデザインする体験プログラム「マイ車両工場」。

大人気のプログラム「マイ車両工場」はキッズデザイン賞も受賞。

自分でデザインした作品を大事そうに抱えて帰るお子様を見ると感動もひとしお。

(佐藤館長)
京急の車両がデザインされた、紙製のお持ち帰りバッグの完成までにも紆余曲折うよきょくせつがありました。バッグを首から下げるためのひもの太さを決めるのに2つの会議が消化され、プラレールを箱に固定する課題を解決するのに何度も失敗を重ねました。
難産のプログラムでしたが、天候の悪い日も、自らデザインしたプラレールを雨から守り、大事そうに抱えて帰っていくお子さんの姿を見ると、妥協せずにやり遂げて良かったとしみじみ思います。

(飯島氏)
“鉄道玩具の王様”ともいえるプラレールを使いたい思いがある一方、玩具安全基準の部分は我々にとっては未知の世界。タカラトミーさんにねばり強く交渉を重ねてくれたのも、トータルメディアさんでした。

難産だった「マイ車両工場」のプログラムづくりを振り返る。

毎日耳にする来館者の歓声。日々の仕事の先にお客さまの笑顔があることを社員が再認識。

(飯島氏)
私のような一般管理部門はデスクワークが中心で、お客さまに相対して仕事をすることが多くありません。ですが2階の社屋入り口に立ったとき、吹き抜けの1階から我が社のファンの楽しげな声が飛び込んできます。勤務する社員が必ず毎日、当館の来館者の姿を目にし、いま自分が手がける仕事の先にはお客さまの笑顔があるという、ともすれば忘れてしまうその『当たり前』を再認識できる。ミュージアムを社屋につくったこの本社ビルの、設計の良さの一つでしょう。

トータルメディアさんは我々が見落としている点をアカデミックにすくい上げてくれた。

(飯島氏)
博物館や科学館などに訪れた経験がある一方で、それらをつくるための手続きは、我々はほとんど知りません。京急のこだわりとはこうではないか、だからこんな展示がいるのだと、トータルメディアさんは我々が見落としている点をアカデミックにすくい上げ、こちらの無茶な注文にも傾聴してくださった。ゴールにたどり着くために必要なステップも、経験則としてご存じだという印象です。

(佐藤館長)
私も飯島も模型好きで、CGよりも模型で示してくれた方が理解しやすい。その感覚をくみ取り、同じ視点に立つために模型を多用して提案内容の説明してくださいました。アナログ的な要素が多かったのも計画を円滑に進められた一因と思います。

自社愛にあふれ、子どもたちの笑顔のために邁進する京急の皆さまの姿勢に感化。

(柴田)
京急の皆さまは自社愛にあふれていて、子どもたちの笑顔のために邁進する姿勢に、弊社も大変感化されました。また、展示に対する安全性や使いやすさへの徹底した追求は、弊社の今後の仕事にも応用できるのではないでしょうか。

子どもたちの笑顔のために邁進した日々がミュージアムとして結実

今後は社員やOBの親睦・コミュニケーションの場としての活用も検討したい。

(飯島氏)
来館したお客さまには満足して帰っていただき手応えを感じる一方で、例えば保線の仕事内容を来館者に伝えるなど、社員参加型のイベントが開催できていない現状があります。また、営業終了後に社員がジオラマや歴史ある車両を見ながら一献交わすなど、社員やOBの方々の親睦・コミュニケーションの場としての活用もまだまだです。コロナ禍の状況をみながら、さらに役割を拡充していければと思います。

未来の運転の担い手たちに、京急のチャレンジ精神や熱意を伝えていけたら何より。

(佐藤館長)
私は京急の運転士を長く勤め、若手社員の指導・監督業務、採用業務にも携わってきました。館内で私がそのことを話すと、親御さんが『どうしたら運転士になれるのか』とお子さまのために尋ねてきます。中学生や高校生らがメモ帳を手に、30分間も質問を重ねてくることもありました。そうした未来の運転の担い手たちに、京急のチャレンジ精神や熱意をさらに伝えていけたら何よりです。今後も『本物を見て、触れて、楽しむ』を合言葉に、さらに魅力のある施設になるよう努めたいですね。

2023年3月2日 京急ミュージアムにて収録

京急ミュージアムに関するプロジェクトレポート

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